第19回1万人大会

日時
2002年9月7日(土)〜8日(日)
場所
群馬県嬬恋 ヤマタ旅館 

ミスターバイク誌 第19回ミスバイククラブ 1万人大会記事より

この道は果てなく。その道は何処へ。

こんにちは、さようなら そして往く道で会いましょう

「どうしてこんなに雨が多いんだろう」
「やっぱ雨女がいるんでしょ」
「誰が? ・・・・・・って、来てるみんなか」

 また今年も雨にたたられた。記憶にある限り、第1回から開催中に雨に降られなかったことはない。7月に開催しようと、8月に開催しようと、そして今年のように9月に開催しようと、必ず雨に遭う。それは行きだったり、帰りだったり、例え昼間がドピーカンでも激しい夕立に遭ったりする。ここまで見事に降られると、逆に天気の心配をしなくなる。「どうせ降るから大丈夫」(!)

「ねぇ、あそこに看板出した?」
「うん大丈夫。交差点ど真ん中、見落とすことはないと思うよ」
「飲み物、もうちょっと冷やした方がいいかな?」
「そっか、そうだね。んじゃ、氷取りに行こうよ」
「ついでに今飲むビールも持ってこよ〜」

 19年前に『女性ライダーだけで集まってみたい』と始まったイベント。それがこの「ミスバイク一万人大会」。創始者はパリダカの完走者としても有名な山村レイコさん。彼女と彼女の呼びかけに集まった女性ライダースタッフが、全くのボランティアでこの大会を支えてきた。企画、運営、そして当日の細かいモロモロ、全て女性ライダーの手で行われる。

 営利目的ではなく、純粋に「女性ライダーに出会いたい」だけが目的のイベント。だからスタッフも参加者と同じく参加費を払う。その上で大会の半年前からボランティアで準備を始めるのだ。無論、素人集団のイベントだから至らないところもある、失敗もある。けれどそれを攻める参加者は皆無だった。またスタッフも「アタシだってお金払っているんだから」と手を抜くことはない。遠慮と思慮と配慮の絶妙のバランス。女性ライダーは、ある意味19年前からずっと「大人」だったのかもしれない。

「うわー、ワルキューレだよ。こんなの乗ってる女の人、初めて見たよ」
「本当だ。あれみんな仲間の人かな、大きいバイクばっかだね」
「あ、みっちゃんだ」
「え、京都のみっちゃん? バイク変えたんだ」
「違う違う。私が知ってるのは名古屋のみっちゃん。凄い、久しぶり。12、3年ぶりじゃないかな」
「ひえええ、アンタそんなにスタッフやってるんだねー。年取るわけだ」
「ほっとけ!」

 バイクブーム、そして女性ライダーブームだったこともあり、第1回から100人の参加者が集まった。それ以降、毎年場所を変え、北は山形、南は紀伊半島先端と全国各地で開催した。そうして多いときは200人、少ないときは70人弱、毎年ほぼ100人の参加者が集まる。今年は91人。そのうち初参加者は14人で、19回全てに出ている者は3人。つまりリピーターが多いのだ。

 女性は結婚、出産を経るとバイクから離れなければならない時期がある。そのまま「向こう側」に行ってしまう人も多い。しかし、やがて復活の時を迎える人もまた多い。若いときは熱く、やがて年月と共に冷め、そして19年目にして熱さを取り戻す。そんな人は男女関わらずいるだろう。長く乗っているにことなんて意味はない。その時、どれだけ熱いか、そしてどれだけ自分が楽しいか、そこが大事。

 ここは「お帰りなさい、こちら側」が当たり前の世界。
「初参加です。40歳半ばですけど18歳年下の彼氏がいまーす」
「バイク馬鹿の旦那と直前までケンカしてきました」
「結婚して10年目に大型免許取得。スィート10ダイヤの代わりにバイクを買ってもらいました」
「ついに私をもらってくれる人が現れました。が、バイク乗りじゃないんです。頑張ってバイクの魅力を植え付けてやる〜!」

 自己紹介では様々なエピソードが語られる。そしてこの日だけは旦那も彼氏も子供も置いて楽しむのが、ミスバイクのモットー。そうなると16〜58歳と年齢幅が広いこともあって、バイク話も恋愛話も千差万別。別れた方がいいだの、それはアナタが悪いだの、おっぱいの絞り方だの、アレの仕方だの、話題は尽きない。

「社長が自殺して大変ですけど、バイクにこうして乗られる環境にいて幸せです」
「1月に転職したばかりだけど、さっき会社が潰れるってメールが来ちゃった。帰ったら職探しでーす」

 時節柄、不況の波はみんなが被っている。でもそれを乗り越える力をみんな持っている。だから「来週いっぱいで会社辞めて、東北地方をツーリングしてきま〜す」となる・・・・のか? なんにしろ『女は強い』と思う。そしてこの場だけかもしれないけれど、この場だけでもみんなで楽しく過ごす術をミスバイクは持っている。

「バイク乗りの友達は男の人ばかりなので、女友達が欲しくて参加したの」
「そうそう。私も殆ど一人でバイクに乗ってたけど、ミスバイクのお陰で気がついたら友達がたくさんできていたよ」
「そうね、あたしなんかバイク乗りの女しか知らないわ・・・・・・」

 当然ながら回を重ねると既婚者が増え、女性の親子(という言い方は変だが)の参加も増えた。そうして今年はついに、初期スタッフの中から親子参加が実現した。第3回で乳飲み子だった子供が、自動二輪免許を取得したのだ。

「16歳です。(イエ〜イと歓声)母がいつもお世話になってます(またイエ〜イ)。ここに来るために学校を休んで3日前に免許取りました(拍手喝采でイエ〜イ)。雨がやです(全員が頷いてイエ〜イ)」
 照れくさそうに自己紹介する姿を、同じ顔した母が満面の笑みで見つめていた。

「皆さん、お疲れさまでした。来年もお会いしましょう!」
「それでは、3本締めで! よ〜、しゃしゃしゃん、しゃしゃしゃん、しゃしゃしゃんしゃん(リピート2回)。お疲れさまでした〜!!」

 19回繰り返された最後の挨拶は、また「来年も!」だった。今年は事務局を務めていたBG編集部員が退社したため、来年の開催を不安がる人もいた。長きに続いた道が終わるかに思えた。しかし、スタッフ達は歩み続ける道を選んだ。この大会をやっていくのは雑誌に出たいためでも、お金のためでもないから。ただ「楽しいから」。だから、きっとこの道は続いていく、開かれていく。

 最後にスタッフの一人の自己紹介文を。きっとこれが、みんなの気持ちを代弁している。
「どんなに高い料理より、仲間と作って食べる焼きそばの方が美味しい。味をかみしめる。いつの間にかバイクに乗って10年以上。今も変わらず、私のワクワクする気持ちはバイクが一番! バイクが最高!」
 ミスバイク、最高!!