第11回1万人大会

日時
1994年7月16日(土)〜17日(日)
場所
茨城県大洗 町営宿泊施設 大洗町サイクリングターミナル

ミスターバイク誌 第11回ミスバイククラブ 1万人大会記事より

おーほほほっ、ミスバイク一万人大会ョ 総勢100人でどんちゃん!!

毎年恒例、なんと11回も続いてしまった「ミスバイクー万人大会」。今年は海水浴客でごった返す大洗海岸前で、並み入るキャンプ客を蹴散ら……いえ悩殺しながら女の大宴会を繰り広げたのだーツ!

 大洗海岸前の大洗サイクリングターミナルに、チャリじゃなく、バイクかズラーッと並んだ。その中から高笑いか聞こえてくる。あ、あれはBGのまりこ。
「ホーホッホホ、どう、この壮観な眺めは。シンヤデイやBG のZミーティングで引掛けた女の子もいることよ。年に1度ぐらいは、女たけで集まってみたくてね。“女性ライダーが少なくなった”なんて言う輩もいるけど、ミスバイクのパワーはそんなものふき飛ばすわ、ハッハッ」
北海道から、九州(なんと鹿児島最南端)から、中にはモンキーで静岡から来ている。'93Z ZR1100やハーレーもある。いやはや盛暑の中、この元気さには圧倒される。
「そう?ホーホホッ、回りのキャンプ客も驚いていたわ。ちなみに詳しい内情爆露は来月にやるわ。これまで(秘)だった女の姿も見せることよ〜ホッホ」
女はげに恐しき生き物……。

女性ライダーが100人も集まると聞いて、ゲッ!とうめく男性ライダーの皆サマ。ホントはとても繊細な!?ミスバイクの実態をあなたにだけ、おしえてア・ゲ・ル!

男子は進入禁止! 女だけの24時間とは!?

文/松本よしえ 各誌でイラストコラムを連載中。一万人大会計11回の内8回参加の常連の目からレポートしてもらった。

100人の女性ライダーはコワイ存在なのか?

 一般的に世の男性ライダーが想像する女性ライダーとは、へルメットから長い髪をなびかせる後ろ姿ってのが定番。もし目の前にこんな女性ライダーが現れた場合、ごくフツーの男性ライダーはついフラフラとついて行きたくなっちゃうのがノーマルな反応でしょう。
 ところがです。その女性ライダーが一挙に100人いるとしたらどうでしょう。ちなみにあたしの周辺にいる男性ライダー10人に聞いてみたところ、
「女のコが100人も集まるんですかぁ ?うーん…コワイなぁ」とか、「なんかスゴそうだよね」などと言ったきり、絶句しちまうヤツが大半。っつーコトは毎年、夏になると全国から100人の女性ライダーが集まるミスバイク1万入大会も、「恐ろしきオンナの集団」などと思われているんでしょうか。思えば1本じゃポキリと折れてしまうか細い枝も、100本の束になれば強いワケで、彼らの意見もまったくハズれているワケじゃないけれど…。
世の男性ライダーの皆さん!
あたし達女性ライダーが、100人集まったからってコワイはずないでしょ。

 う?ほら、アナタたちは道端で立ち住生している若葉マークのオンナのコを見かければ、たとえ反対車線でもすぐにUターンして「どーしたのぉ?」と、いつも暖かい声をかけてくれるじゃないですか
それが1人の女性なら声をかけられても、100人じゃコワくてヤダ!っつーんですか。えっ?どーなの!?ちゃんとオネーサンに話してごらんなさい!とまあ、つい感情的になっちまうのをグッとこらえて、まずは100 人のミスバイクの実態!?なんぞを見ていただいて、それからじっくりと判断していただくコトにいたしましょう。

ミスバイクの女性はどんな人たちなのか?

 さて毎年恒例のミスバイク一万人大会は今年で11回目。つまり11年も続いている伝統ある!?イベントなのです。今年の会場は茨城県の大洗海岸がすぐ目の前にある大洗サイクリングターミナル。白い浜辺を水着のギャルが行きかい、ファミリーキャンパーがテントを広げる傍らに、約100台のバイクがズラリと並びました。
参加者は18歳のピチピチギャルから54歳の熟女まで。学生やフリーターもいれば、OL、自営業、主婦など、ジツにバラエティ豊かな顔ぶれが100人。当然のことながら乗っているバイクもバラバラで、50ccのスクーターからリッターバイクまで。
 年々、限定解女は増え続けていますが、全員が大排気量のバイクに乗ってブイブイいわせているワケじゃなく、リッタークラスの重いバイクを小柄なカラダで乗る人もいれば、免許に限定がつくのがイヤだから取ったという骨太な考え方の人もいます。
 全体ではオンとオフが8対2くらいの割合で、オンロードではアメリカンやネイキッドがグッと増えて、昨年に続いてハーレー2台も登場しました。一方、オフロードはやはり取り回しのいいセローがイチバン人気です。
 そうそうオフといえば、今年は参加者の福沢曜子さんがオーストラリアンサファリに出場する話題がありました。彼女は一万人大会の直後、 8月のはじめに日本を出発してラリーに出場するとのコト。ジツは彼女、生まれつき耳が聞こえないんだけど、
「毎日、一生懸命走ってくるだけ!」
と、筆談でラリーへの意気込みを語る姿からは、元気のオーラがビシビシ出ていました。いつも陽気で、すっげーよく食べる彼女は、ガッツポーズをするとチカラコブがポコッと出て頼もしい限りです。
 ところで毎年100台ものバイクが集まると、やはりバイクを巡る時代の傾向のよーなものも現れます。たとえばかつて5〜6年前までは、赤いバイクやピンクのウエアがずいぶんハバをきかせていたのに、年々モノトーン化が進んで今年はやたら黒いバイクが多いようです。思えばあの一世を風靡した女性ライダーの皮ツナギもいまや少数派。いまツナギを着て参加している人を見かけると、かえって新鮮に感じるくらいです。
それにしてもかつて女性ライダーが着ていたピンクの皮ツナギ、あれはどこへ行っちゃったんでしょうね。

食べるコトヘの意欲はミスバイクの証し

 さて、気温35度を越えるドピーカンの日差しのなかを、サービスエリアのたびに日焼け止めクリームを塗り、長い髪をゴムで束ねて汗だくで駆けつけるミスバイクの関心事とは。
 まず100人が集まって、必ず話題にのぼるのは今夜のゴハンのコト。なにしろ大会が終わった後も、ミスバイクが2人以上集まって思い出話しに花を咲かせるときは、必ず食事が話題になるくらい。1泊2日で1万円という値段をアタマに置きながら、女性は自分が旅先で何を食べたかをキッチリ覚えてチェックしているのです。
 たとえばこれまでの大会ではバイキング方式の食事が多かったんだけど、どこどこの大会ではトリの唐揚げが少なかったとか、朝ゴハンにタマゴが付かなかったなど、男性諸氏にとってはどーでもいい内容をキッチリ覚えていて、これがけっこー話題になるのです。自分で言うのもなんだけど、きっと女性の食への関心の深さって、男性から見たらすごいパワーに感じるんでしょうねえ。
 さて、その肝心の夕食メニューですが、今年は野外バーベキュー。宿舎の屋外に併設されたキャンプ場のバーベキューダリルを囲んで、夕暮れの海を眺めながら会食という楽しい企画です。
 うっすらと暮れ始める海辺のキャンプ場の炊事場は、スタッフに混じって野菜を洗ったり刻む人たちでいっぱい。全員が短パンやTシャツに着替えて、紙皿と割箸を手に7枚の鉄板の回りに集合する姿は、バーゲン会場さながらの殺気さえ漂うほどです。その緊張が乾杯の合図とともに破られて、無数の箸が鉄板にドドーッと集中する瞬間、これこそ元気なミスバイクを120%体感するときでしょう。
 ところで今年はスタッフが用意するもの以外に、全員が1人1品を持ってくるお約束。参加者は知恵をしぼっていろんなモノを持ち寄りました。なんといってもイチバン多かったのはウィンナーソーセージの類。
 お手軽なバーベキュー素材としては代表選手ですが、プリリッとした歯ごたえの荒びきタイプやポーク、チキンなど、当たり前の品ぞろえのなかにも食いしん坊のコダワリがチラホラと見え隠れするあたり、やはり食べるコトに興味シンシンの女性ならではかも。
 それ以外にも大洗海岸周辺で調達した魚介類や野菜なども大量に差し入れられかなり豪華な内容です。
 ちなみに前もって用意した肉は18キロ。
 大会当日にスタッフが焼肉のタレで手もみした愛惰たっぷりの味付けはバッチリだったげど、ジツは半分近く余つてしまい、慌てて周囲のキャンパーに無料で配るなーんて一幕もありました。

キャンプ場でコスプレショー オヤジもビックリのパフォーマンス軍団

 さて無事に?夕食も終え、力ラダ中の血がイブクロに集まって頭が働かなくなった頃、参加者が一丸となって燃える出し物が待っています。「みなさーん、わたしたちのビョーキの時間ですよぉ」という、軽やかなかけ声とともにラジカセからバナナボートの音楽が流れ出すと、水着にパレオをつけた南国の島娘風が踊りだし、歌とコスプレと踊りのキョーレツなレビューショーが始まります。
 これはスタッフによる毎年恒例の出し物なんだけど、初めて参加した人はそのキテレツな扮装に固まってしまうコトもしばし。なにしろシャンプーハットを帽子代わりにかぶった正体不明のバナナ人間トリオは現れるわ、モミあげをマジックで描いて黒のスーツを着込んだブルースブラザースは踊るわの、猛暑でやられた脳味噌をいっそうトロけさせてくれるような男子(禁)マークの特別興業。
 お見せできない男性ライダーのみなさんは、イラストを参考にアタマのなかでイメージしていただくとして、当日の会場は観客のミスバイクたちの声援が夜空にこだまする熱い約30分でした。
 なかでも極めつけはフレンチカンカンもどきのドハデな衣装をまとった3人娘です。ストッキングに衣類を詰め込んで作った足もどきを手に登場し、おなじみのニギニギしい音楽に合わせて足もどきを夜空に向かって振り上げて踊ります。観客のミスバイク全員も、「きゃーっ鼻血でちゃいそーっ!」と、黄色い声をあげて全員が大合唱。
 カンカン娘が後ろを向いてスカートをガバッとめくりあげると、白いフリフリパンツに…歓迎』の赤い文字も描かれていて、その姿のままズンズンと観客席へ迫ってくるという激しいパフォーマンスです。ついさっきまで平和なキャンプ場だった会場は、一瞬にして六本木のショーパブも真っ青な舞台に変身。ミスバイクの一団から30mくらい離れた炊事場では、洗い物をしているファミリーキャンパーのパパがじーっとこちらをうかがっておりました。
 ちなみにこのショータイムは、ミスバイクスタッフの熱き思いに支えられて、毎春のゴールデンウィーク明けの頃から練習を積み重ねて披露されるものですが、できれば知り合いや彼には絶対見せたくない、ましへてや親が見たら泣くかもしれない……と、あるスタッフがポツリと漏らしておりました。

タダでもらえるなら物欲のジャンケン

 そんなスタッフの嘆きと同じで、参加している自分もできれば人に見られたくないという瞬間があります。それはショータイムの野外が1部とすれば、続く宴会場での 2部で繰り広げられるジャンケン大会。賞品として提供されたヘルメット6コを巡って、欲しい人がジャンケンで勝ち取るというゲーム?です。ヘルメットは用品のなかでもやはり高いものですよね。自分がお金を出して買うとなれば気にいるモノにこだわるクセに、目の前の新しいジェットのヘルメットがタダと聞くと、もらえりゃラッキー!と、心がググッと動くのは人情ってもの。
「これ欲しい人は手をあげてーっ」と、ジャンケンの参加者を募る声に、ほぼ全員が立ち上がりジャンケンポン。アドレナリンがイッキにドパーッと噴出して、さっきまで仲良く喋っていた人を対戦相手に、ついホンキでショーブしちゃうのは物欲のせいでしょうか。
 ところでもらえるといえば、大会に参加した人は第11回の記念丁シャツとミスバイクのステッ力ーが必ずもらえるほか、バンダナやTシャツなどの入ったお楽しみ袋もあるんです。これは会場に到着直後にクジ引きで選ぶ仕組み。賞品入り袋のロを縛ってある長ーいヒモが束になっていて、このなかから1本を選んで引っ張ります。なんだか懐かしい縁日のクジ引を思い出す仕掛けで、中身は袋をあけるまでわかりません。これだと自分が引き当てた袋の中身を見たあと、隣の人の中身もつい気になるもんで、初対面の人も袋の見せっこでワイワイ仲良くなれるのは楽しい副作用かも。そんなワケでチラリと隣の方の袋をのぞかせていただいたら、皮のグローブを発見。
 情けないコトに人が自身のよりいいモノを獲得すると、ちょっぴりウラヤマシイ気持ちになるのです。

こんど女に生まれたら女性ライダーになる

 さて、世の男性ライダーにミスバイクを理解していただくには、ホントは女性に生まれ変わっていただいてホンモノの女性ライダーになるしかありません。ここまでお見せしてきた一万人−大会の様子はほんの触りの部分で、昼間に行なわれるライディングの講習会や不用品バザー、宴会など、1泊2日で繰り広げられる内容は盛りだくさん。
 ミスバイクは100人が一団となってツーリングをするとか、一目瞭然の活動内容があるワケじゃないので理解しにくいけれど、ジツはこんな風に実態がつかめないのがミスバイクらしさだったりします。
 ある人にとっては、バイクに乗っている未知の女性と出会うための大会だし、別な人にとっては長年おつき合いのあるバイク仲間と同窓会気分で会う日。1泊2日の約24時間は、参加する人によって意義や目的が決められるのです。ただすべての人に共通しているのは、バイクをフィルターにしていろいろな情報交換をする場になっている点です。

韓国式アカすりを手に今夜は人生を語ります

 たとえば宴会後の浴室でお肌によい基礎化粧品をススめあったり、ちまたで話題の韓国式アカすりを使って浮き世のアカを流し合うなんてのも、女だけの世界での情報交換のひとコマ。日頃、排気ガスを浴びている髪のケアについてもそう。
 ここでちょっと言わせてもらえるなら、男性ライダーが憧れる美しいロングヘアを維持するだめに、女性はトリートメント代だってかかるし、いろいろタイヘンなんだぞ(ロングヘアの男性ならおわかりですね)。ショートも魅力的なんだから、ロングヘアの女性ライダー像ばかり誇張して騒がないでくださいよ。
 とまあ、お話しついでに日頃のウップンをハラさせていただいて、宴会の余韻を残した睡眠不足の翌日。
 目の下にクマを作ったままお揃いのTシャツに身を包み、集合写真の撮影をするのがイベント最後を飾る儀式です。
 夏の雲がぽっかり浮かぶ青空に全員が挙を高く上げて写真に収まり、あとは全員が笑って走り出すばかり。
「気をつけてねーっ!また来年も必ず会おうね−」と、口々に交わす挨拶は毎年おなじみの文句だけど、 100分のイチのミスバイクがイチバン楽しみにしているひと言です。これからの1年間、街でピンク色のステッ力ーをつけたバイクとスレ違うたび、じーんと夏の思い出がよみがえり、つぎの第12回大会はどこで開かれるのかなあ?…なーんて、ヘルメットのなかでつぶやいちゃう日々を送るのです。